いずん日記

日記、雑記、考え事 ギリギリ女子高生

ほっこり終末系!伊坂幸太郎「終末のフール」感想

先日、ヌートンというサイトの記事(静かにちゃんと終わる!終末系小説3選 | ヌートン 新たな情報未発見メディア)をきっかけに、伊坂幸太郎さんの「終末のフール」を読了しました。

ネタバレあるかもしれませんので注意です!

これが初めての伊坂幸太郎作品です。前々から伊坂幸太郎さんの作品は読みたいと思っていたのですが、まさか最初が終末系・・・。

あらすじ

この作品は、’小隕石が8年後に衝突し、地球が滅亡する’と予告されて約5年が経った時が舞台です。仙台北部の団地を舞台に、8つのお話が繰り広げられます。

それぞれの話は、同じ団地に住む人々に焦点を当てているとあって、それぞれの話が少しずつ関連しあっています。例えば、始めの頃の話で「地球滅亡まですぐなのに、ビデオ貸し屋をやっている酔狂な男」として登場した人物が、後の話では家庭を持つ夫、として登場します。話を重ねていくにつれて、登場キャラクターが厚みを持つ一人の人間として出来上がっていくのは、短編集ならではの楽しさだと思います。

 

魅力① 多様な登場人物と世界の終わり

この作品中の人物は皆、世界の終わりを違う風に捉えています。

 

ある人物は、憎い人間が他の人たちとともに終わりを迎えるなんて許せない、という考えで復讐殺人を企てます。

またある人物は、街が隕石による津波で沈むところを見届けてから最後に死にたい、と屋上でヤグラをつくります。

生き残れるシェルターを作ると謳い、怪しげなセミナーを開催する団体もいます。

 

そんな人々の模様を読みながら、自分ならどうするか、と考える面白さもあります。そしてコミカルな魅力を持った人物も多く登場するので、テーマの割にさっぱり読むことができます。

魅力② じっくり味わえる終末

小説を読んでから、人の命、生き方について色々な考えが湧き上がってきました。特に一つ、不思議に思ったことを挙げたいと思います。

作中では、世界の終わりを予言されてからもう後が無い、と自殺する人々が急増したという背景が描写されているのですが、世界の終わりを予言されずともそれぞれに終わりはありますよね。

終わりがあるから今死ぬのはおかしいと感じますが、作中の自殺する人々の気持ちもなんとなく分かる。

この考え方の違いはどこから生まれるのかと自分が不思議になりました。

私も実は将来不死不老が実現すると信じているのか、それとも自分以外の人が死に苦しむ様に耐えられないのか?

考えても答えは出ませんが、この問いには人生を充実される秘密があるような気がしないでもありません。

 

私の中で、「いい本は読んでから寝る前に考えて寝れなくなっちゃう」という持論がありますが、その点でもこの本はとってもいい本です。

 

総括

もちろん、純粋な面白さ、という点でもこの本は抜群です!

日常を描く本ではあるのですが、普通よりも死が近いところにあるので話の始めは暗めのものが多いです・・。しかし、最後には登場人物たちがそれぞれの解を得て終わります。そして読者の私もなんとなく救われた気になります。

そういう意味で、この本は「ほっこり終末系」と言えるのではないかと。

 

この本は終末モノではありますが、読後感は非常に爽やかで、頑張って生きようという気持ちにさせてくれます。とてもいい本でした。